ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
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04年  07月 某日

■  ラメのスウちゃん
立て続けに漫画の話題。
エンターブレインからあすなひろし作品集「青い空を,白い雲がかけてった」と「いつも春のよう」の二冊が刊行された。
あすなひろしの死去後公式サイトの高橋さんたちのご尽力で自費出版のような形で作品集が刊行されていたが、一般書籍として作品集が流通するのは久々である。
「青い空...」は言わずと知れたあすなひろしの代表作。中学生のツトムとヨシベエを中心に思春期のほろ苦さと垣間見る大人の世界を独特のセンスのギャグで包んだ傑作。
「いつも...」は同題の少年漫画と、ビックコミック・オリジナルに掲載された「哀しい人々」シリーズを中心にした短編集。

というわけで久々に拝見しました、「ラメのスウちゃん」(「いつも春のよう」収録)
私が読んだあすな作品の中でも特に印象深く記憶している作品。
土方の手配士、源ちゃんはドブスで男から相手にされないホステスのスウちゃんに一目惚れ。同棲を始めるが交通事故で失明してしまう。スウちゃんは自暴自棄になる源ちゃんに献身的に尽くすが源ちゃんは階段から落ちて死んでしまう。
スウちゃんが繰り返し歌う「露営の歌」(♪勝ってくるぞと勇ましく...ってやつ。昔の軍歌です。)が実に効果的だ。あすな作品には歌をモチーフにしたり演出として使った作品も多いが、この作品にはポップスでも演歌でもいけない。景気がいい歌詞にどこかもの哀しいメロディーのこの歌じゃなけりゃいけない。暫らくのあいだこの歌が頭から離れそうに無い。
たった24ページの漫画だけれど、ブスとブ男の恋物語なんて誰も読みたくないかもしれない。スウちゃんのたった一度の恋として過去形で語られる物語は、かなり自虐的である。
かわいがってくれた男は父親だけ。愛する源ちゃんは小便まみれで死んでゆくというかっこ悪さ。
自虐的であるがゆえに小さな飲み屋を切り盛りするその後のスウちゃんの後姿はたまらなくいとおしい。スウちゃんはブスだけどとても”可愛い女”なのだ。
で、これって1975年の作品、って事は「青い空...」より前の作品だったんですね。イメージ的には「哀しい人々」が後かと思っていたが、この頃ってあすなひろしが一番ノッてた時期なのだなぁ。

それから30年。スウちゃんは60か70になってる勘定だ。
もし作者が存命なら今のスウちゃんの話を描いて欲しかったけど、かなわぬ願いになってしまった。

04/07/04
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