ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
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04年  08月 某日

■  怪談・増上寺門前の溺死体
去年は夏が来ないで梅雨寒のまま、いきなり秋になってしまったが、今年は梅雨を飛ばして6月からの猛暑である。
あまりに蒸し暑さが続くので、寝苦しい夜のつれづれに、昔体験したこわーーーい話を一席。

私はかつてフリーターだった時期がある。一度就職したが一年ほどで退職して、その後の数年間、アルバイトで生活していたのだ。いろいろな仕事をしたが、その中でも吉野家でのアルバイトが一番長かった。途中バイクの事故で半年ほど中断した期間を挟んで足掛け2年以上やっただろうか。
場所は芝大門である。この店がまだあるかどうかは知らない。当時は東京に住んでいたのだが、今は近くまでは行っても第一京浜を通り過ぎてしまうのだ。

芝大門は山手線の浜松町駅から5分ほどのところで、増上寺の門前町であるが今はすっかりオフィス街になっている。
芝・増上寺は徳川家の菩提寺で、風水によって江戸の南を守るために建立されたとか。将軍の墓もあり、時代劇にもその名が時々登場する大きな寺である。

その参門の前の牛丼屋で夜10時から翌朝の8時まで一人で接客と清掃などの作業をする。
一人でやっていて1時間にだらだらと30人も入ると接客だけでなにも出来なくなる。ちなみに朝は100人/時なんてこともあったが、これはもう地獄である。
しかしオフィス街だから昼間は人も多いのだが夜になるとばったりひと気が無くなる。
終電を過ぎると一時間以上、一人の客も来ないなんてのもザラだったから、牛丼を売るというより深夜のメンテナンスをしていたようなモノだ。もっとも、そういう事情は店によってかなり違うが。

そんな、ある夏の暑い夜。
さして客も来ないので、近くの自販機で買った午後の紅茶(私は缶コーヒーが苦手である)を飲みながら、一服したら作業を始めようか、などと考えていると来客が。
「いらっしゃいませ!」と元気な声で静寂を破ると客の対応である。そして牛丼を出し終わると次の客が。
なぜかその時に限って次々に来客があった。急に客が増えると対応が大変である。もう、たいして入客も無いだろうと思っていたので準備をしていなかったのだ。その上メンテ作業が遅れるから気分も少々あせってくる。電車はとっくに止まってるのに何でだよう、などと思いながらも必死で40人/時のペースの接客をしていた。
そしてまた、ぱったりと客足が途絶えた。いつものペースに戻ったのだ。
店内に客がいなくなると静寂が戻る。外はひとっこ一人いない深夜のビル街である。
ああ、これで作業が出来る。ほっとしてカウンターの陰の席に腰を降ろすと紅茶が残っていた。
そうだ、休憩の途中だったんじゃないか。一人だとこんな事はよくある。適当に暇を見計らって休まないと休めないんである。
さて、作業が遅れてる。気を取り直してさっさとやらなければと、残りの紅茶を一気に飲み干した。

っと、舌に  "ザラリ"   とした感触。
そしてセロファンを口に入れたような パリパリ とした感じもする。

グェ!
缶入りの紅茶を飲んだはずなのに何なんだ、これは!。
訳が解らないが本能的に恐怖を感じた私は口の中の物を厨房の白いタイル床の上に吐き出した。

そこに現れたのは
紅茶の中で溺死してダラリと羽を拡げた ゴキブリの死骸 であった。
ザラリとしたのはゴキブリの足、パリパリしたのは羽だったのだ。

あれから20年以上。今でもあの舌の上の ザラリ パリパリ とした感覚ははっきりと覚えている。

ねっ、恐いでしょ (^−^)

04/08/05
雑記

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