ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
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06年  08月 某日

■  惑星の定義
一応今回の件は書いておかなくてはならないだろう。

IAU(国際天文連合)総会が紛糾。
当初「惑星とは何ぞや」を定義する小委員会が出した惑星の数を9から12に増やすとする意外な結論に、異論が噴出して最終的には逆に8に減ることになった。

今回のすったもんだは元々10年以上前から「冥王星を惑星と呼ぶのは如何なものか」という声が上がり始めたことから始まっている。
遡れば冥王星を惑星と認証したIAU総会でもかなり異論が有ったとか。

その後観測技術が進んで海王星より外側に多数の天体が発見された。かつては「彗星の巣」などと呼ばれた外辺地帯(現在はエッジワース・カイパーベルトと言われている)に新天体が次々と発見され、冥王星はこちらに属する天体に分類した方がいいんじゃないの?ってことだ。(大きさの問題だけじゃなくて軌道や組成の問題も含めて。)だんだん太陽系の辺境のことが分ってきたら今迄の常識では通用しなくなったと言えるかもしれない。

そして混乱のきっかけになったのが冥王星より大きな天体の発見。
まだ正式な名称が決まっていないが、先の小委員会の決定で新惑星になると報道された「2003 UB313」という天体。
発見者は「ゼナ」と呼んでいるのでいずれ承認されると思うけど、冥王星が惑星ならそれより大きなこの天体は当然第10惑星であると主張していた。正論だわな。
でもそれは違うぞってのが惑星研究者の趨勢になっていた。
だから今まで曖昧だった惑星の定義から冥王星を外そうという動きが今回の動議の発端だったわけだ。

ところが小委員会の結論は蓋を開けてみると冥王星を外さないばかりか、冥王星に惑星の地位を与えるために衛星のカロンや小惑星とされていたセレスまで惑星と認める内容だった。(しかも、これ意外と解りやすい。重力均衡で球状になれる大きさなら何でも「惑星」なのだから。ただし今後惑星の数が増え続ける可能性もある。それはそれで良いとも思うけど。このニュースを初めて目にしたときは「ホンマかいな?」という思いと同時に「上手いこと逃げたなぁ」ってのが正直な所。)
心情的に冥王星を惑星として残したい人々も多い。私だって「ヤマト」や「無の障壁」(光瀬龍の短編)で親しんだ冥王星が急に惑星ではなくて「単なるカイパーベルト天体の一つ」になるのは寂しい。しかしアメリカではアメリカ人が発見した唯一の惑星って事でそれ以上の思い入れがあるらしい。しかもゼナを発見したのもUCLAのグループである。
報道では触れていないが裏で相当な政治力が働いたと考えたのは私だけではないだろう。冥王星を惑星から外そうとしていた人々からはゴリ押しにしか見えなかったはずだ。現状では冥王星を惑星と言い張るのはちょっと無理が来ている。

何にせよ今迄の経緯を知らない一般の人には惑星の数がいきなり増えたり、また数日で逆に減ったりは唐突な話だったに違いない。ただ、今回の騒ぎは単に分類上の問題だから太陽系に於ける冥王星の重要性が下がるわけじゃないのだ。NASAが今年の1月に冥王星探査機「New Horizons」を打ち上げたように、益々重要な研究対象になるだろう。

結果は順当なものだが、他に良かった事と困ったことを。
良かったのは「ワケワカラン」とは言いつつ一般の注目を集めたこと。NHKは7時のニュースで会場の前から生中継までやってた。やり過ぎとも思うけど一分野の学会がこれほど注目されたことはない。これで少しでも星に興味を持つ子供が増えれば。

困ったのは用語がいろいろ変更されそうなこと。
上の「エッジワース・カイパーベルト天体」なんて舌を噛みそうな名前、やっと覚えたと思ったら「トランス・ネプチュニアン天体(海王星外天体?)」になるとか、「小惑星」って言葉が無くなって彗星や上記天体もひっくるめて「Small Solar System Bodies」(太陽系小天体?それとも単に小天体が言いやすいか??今風に略したらSSSB??? これじゃ何だかワカラン)とか、冥王星サイズの星はドワーフ・プラネット(dwarf star → 矮星 に習って 矮惑星って訳すと小惑星よりもっと小さい印象を受けるよなぁ。小人惑星は差別用語か?)とするとか。とかとか。まだ日本語訳も定まって無いそうな。

子供たちはともかく脳味噌が化石状態のオッサンには覚えきれないよぅ〜。

06/08/25
科学・技術

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