==== いざかや ====




粋な雰囲気の男がふらりと居酒屋へ入って来る。
男のモノローグで話は進む。
男が気持ちよく飲み始めたところに十手を持った
同心と岡っ引きが現れ店の親父に話を聞き始める。
店の中には他に四人の雲助と人の良さそうな男女の客。
そして未だニキビの消えない若い男と座頭が一人。
何か事件でもあったのだろうか。雲助なら人くらい殺しかねない。
いや、ただの盗みかもしれない。とすればこの座頭だって怪しい。
同心はまだ親父と話している。
どんどん疑心暗鬼になる男。自分にも心当たりはないか?
思いをめぐらすと二ヶ月前の仕事中に
身分のありそうな若侍が落馬して肥溜めに落ちたのを目撃して笑ったのだ。
やっぱりあの事か・・・
(↓以下ネタバレのため伏字。)
そして、同心が十手を落としたのを切っ掛けに店中の客が一目散に逃げ出す。
訳が判らず唖然とする同心と岡っ引き。
全ての客が自分を探していると思ったのである。

*

楠勝平のなかでは珍しいギャグテイストの作品。
おかしみの中に誰にも在る猜疑心を鋭く描いている。


■ ガロ 1966年 11月号掲載 全13頁




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