==== 喧嘩 ====




生まれたばかりの子供を抱いた女房に見送られ
機嫌よく商売に出かける玄次。
玄次は佃煮を売り歩くぼて振りだが町の中で兄弟分の喜助に出くわす。
一服しながら軽い世間話をしていた二人だが
喜助には何か悩みがあるらしい。
その様子を心配して、訳を聞き質そうとする玄次。
しかし喜助はそんな玄次を突き飛ばし話そうとしない。
ムッとする玄次。しかし玄次は喧嘩をしたくなかった。
ぐっと堪えて慰めようとするが喜助は「うるせえなァ」と、取り合わない。
玄次は喧嘩をしたくなかったが売り言葉に買い言葉
次第にエスカレートしてとうとう殴り合いの大喧嘩になってしまう。
仲裁が入ってその場は納まったが、玄次の気は納まらない。
長屋に戻っても些細な事に当り散らし
とうとう仲の良い女房とも取っ組み合いの大喧嘩になってしまうのだった。

*

ある、ある、こんな事、というシーンを描いた作品。
「玄次は喧嘩をしたくなかった。」
というナレーションが繰り返し使われ
気持ちと裏腹にその場の勢いでどんどん事が大きくなってしまう
人間の愚かしさがコミカルに描かれる。


■ ガロ 1967年 2月号掲載 全12頁




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