ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
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04年  12月 某日

■  ゴジラとスカイキャプテン
いつもの年は年末はなんとなく忙しいので丸一日時間を空けるのが難しくて、忘年会とかも付き合えないんだけど、今年は暇(って言うか売上最低)なんで映画を観て宴会。

「スカイキャプテン」が今週で打ち切りみたいなのでまずこれを観る。上映時間を調べたら朝の11時の回の次は夕方の7時半。昼間は別のプログラムだ。冷遇されてるな。余程入りが悪いのか。夕方は酒宴なわけで、仕方が無いので11時から。でもその後時間が余っちゃうからついでに「ゴジラ・ファイナル・ウォーズ」も。映画の梯子は久しぶり。って言ってもシネコンだから二本立てを見たようなものだけど。

で、飲み会の報告をしてもしょうがないので映画の感想を少々。多少のネタバレもあるので未見の方はご注意ください。

まずは「スカイ キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」
それなりに期待はしてたんだけど期待以上の出来だった。
映画にCGを持ち込むのはどちらかと言えば否定的、って言うか食傷気味なのだけど、これはCGの中に人間をはめ込んだようなもの。
アニメ版「メトロポリス」を彷彿とさせるオープニングのニューヨークの描写。ヒンデンブルグ飛行船やカーチスP40といった実在のメカと、リベットだらけのブリキ細工の様なロボット。飛行空母や流線型の巨大ロケット等々、レトロなデザインのメカと、紗を掛けたようなソフトフォーカスの画質があいまって全編に独特な雰囲気が漂うので、アニメと実写を組み合わせた感覚に近くて、違和感がありすぎるから気にならないという逆説的な結果になった。ただしこれが成功したからって同じようなものばかり作られると困るんだけど。

お話の方は地球殲滅を企むマッドサイエンティストを探す女性記者と、元恋人のスーパーヒーロー、スカイキャプテン。そこに二人が別れる原因になった英軍の女性将校がちょっと絡んで...ってな、ありがちな話なのでどうでもい。
そんなのあるわきゃないぜ、って言うアホらしさを楽しめるか否かで評価が決まる。もう私など最後までニヤニヤしっぱなし。
主人公の登場するシーンでは「スカイキャプテン!スカイキャプテン!」と呼びかける無線の電波が同心円になって広がる。P40(改)が潜水艇になるシーンなど思わず手をたたいて大笑いしてしまった。それでもプロペラのブレードは抵抗を減らすためスピンナーに格納される芸の細かさ。こういうセンスが日本のSFにも欲しいなぁ。(今作っている黒鮫号など奇抜ですごくカッコいいデザインなのに細部を見るとインテイクの前面がたいらにカットしてあるとか、尾翼がただの板切れ(断面がたいら)だったりと、容認できない流体力学的な手抜きがいっぱいある。勝手に直したけど。)
ありがちな話とはいえシナリオはよく練ってある。主人公が元フライング・タイガース(日中戦争初期、空軍力を持たない蒋介石軍を支援した(建前上)民間のアメリカの義勇軍)のパイロットだったという設定などヒコーキ好きの心をくすぐるし、アンジェリーナ・ジョリーが登場するまでの伏線の張り方、ヒロインの性格描写など、まったくそつが無い。特にラストシーンは何度も伏線を張っておいて最後の一言でストンと落としちゃう手際のよさ。これは「面白い」を通り越して脱帽!

ちょっと苦言を呈するならアップが大アップ過ぎること。この監督、初監督作品だそうだがテレビ出身の人なんだろうか。スクリーンで見るには顔が近すぎて少々圧迫感がある。ここまで寄らなくてもいいんでないの?
まぁ、かなりマニアックな映画だからDVDのことも考えてるのかもしれない。テレビ画面だとソフトフォーカスの効果は減るけど細部がよく見えないというストレスも減りそうだ。
それと、これはエンドロールにも一枚看板で出てるから書いてもいいと思うんだけど、マッドサイエンティストを演じてる(?)のは10年以上前に亡くなった名優、ローレンス・オリビエなのだ。(細かくは書かないけど生身で登場するわけじゃない)
これって往年のファンには売りになるんじゃないのかなぁ。宣伝、下手だぞ。

続いて「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」を見る。
いきなり「TOHO SCOPE」のタイトル。そして新たにミニチュアを作ったと思しき”旧”海底軍艦「轟天号」!
おお!かっこいい! これだけでも金を出して見る価値はあった。ただしマンダがCGなのと艦長が中尾彬ってのはちょっとなぁ。
ネットでは賛否分かれている「ゴジラ」だけどどんなモンか、多少の不安を持って見た。話が進んでいくうちにムフフな所がいろいろ出てきて楽しい。何の説明も無く唐突に小美人が出てきたり佐原健二の役名が神宮寺”博士”だったり、水野久美が波川”指令”だったり。ちなみに私の携帯の待ち受け画面はこれ。わはは。
そんなくすぐりは別にしても結構面白い。
こちらもお話はどうでもいい。シナリオに関してはいまいち練れてないけどテンポ良く進んでいくんで気にならない。X星人役のいっこく堂サンの怪演もスバラシイ(←違うって、別人だよ!)。ミニラのぬいぐるみはともかく、富士の裾野に住むマタギ役の泉谷しげるなんか最高!衣装なんか、これだけでアカデミー賞をやってもいい。

で、クライマックスが近づくにつれて...「あれれ、ゴジラはどうしちゃったの?」

この監督、よほど格闘技がお好きなようで(新)轟天号の艦長はじめ、何人もの格闘家が出演している(らしい。私はそっちの方は知らないんだけど)。んだもんで「マトリクス」ばりの格闘シーンがやたら多い。序盤は許せるとしてもクライマックスで人間の格闘なんて見たくはない。怪獣を見に来てるんだからさ。格闘技好きな人なら面白いのかと思ったけど一緒に見た格闘技好きの友人(彼は10回戦までやった元ボクサーでもあるから筋金入りである。ただし私より怪獣好きでもあるのだが)も呆れていたのだから何をかいわんや。
思い出したようにキングギドラとの決戦を征してエンディングへ。

うーん、だけどこの終わり方、昭和のガメラじゃないの?お子様もちょっと引いちゃいそう。
「スカイキャプテン」の鮮やかなラストを見た後ではちと辛い。
なるほど、賛否分かれる理由がわかった。前半は面白いのだけれど後半は違うところに行っちゃう。格闘シーンを中心にあと20分カットしたらすっきりしそうなんだけどな。惜しい。


うう、それにしても2本立てはキツイ。昔は一日で8本見たなんてこともあったのだけど。

04/12/13
感想文とか

■ コメント


洞口 久光  05/05/29 14:20

初めまして。ほらぐち(洞口)と申します。申年生まれの中年です。私も「スカイキャプテン」を楽しく見ました。P40の車輪の格納映像は、飛行機ファンには堪らないですよね。秘密基地にB24リベレーターがさりげなく置いてあるのも嬉しかったです。しかし、1939年という時代設定で「フライングタイガースに居た」というセリフが引っかかり、調べたところ、クレア・シェンノート率いる「アメリカ合衆国義勇軍」が中国に配備されたのは、1941年6月でした。パールハーバーの半年前です。1939年には「フライングタイガース」は存在しなかった訳で、あのセリフは蛇足(間違い?)になってしまったようです。でも、面白かったですよね。続編は作られないのかなあ?できれば、今度は、P51とか、P80等に乗って登場して欲しい!
 つまらないコメントですみません。
追伸:ゴジラは、まだ見ておりませんので、DVDで是非見ようと思います。シリーズ中私が最も楽しめたのは、モノクロの第1作目でした。最初は、巨大な足音だけで観客のスリル感を高めていった脚本が良く出来ているのと、「オキシジェン・デストロイヤー」共々、平田昭彦(だったかな?)演ずる博士がゴジラと運命を共にしてしまうという筋書きは、反原水爆、アンチ殺戮兵器のメッセージが色濃く、当時の「日本」が世界に発したメッセ−ジと受け止めています。


秋津  05/05/30 02:07

洞口さん、初めまして。管理人の秋津かげろうです。

すごいですね。格納庫にB24が有りましたか。フライングタイガースは結成されてなかったのですね。
素晴らしいです。いや、洞口さんが!

私は模型飛行機好きなので実機の事も一般の人よりは多少詳しいですが、ディープなファンではないので、そんな事はまったく気が付きませんでした。
こんな微妙な考証をされるファンがいるのが素晴らしいと思うのです。
でも、多少の間違いはあのタイガーシャークの塗装が登場するなら許してあげよう、ってモンですよね。この映画、飛行機好き、オールドSF好きのハートをグサっと突き刺す作品でした。
続編、って云うかシリーズ化は簡単に出来そうな構成ですね。奇しくもちょうどDVDの宣伝を始めたようです。興行成績はいまいちでしたが、こちらの売り上げが良ければ次作も有るかもしれませんね。
こんなマニアックな映画はDVDの方が売れるかもしれません。

で、「ゴジラ・ファイナルウォーズ」は悪くないですが、いずれテレビで放送されると思いますので、趣味が合うか確認してからでも遅くはないと思います。多少好みが分かれるところですから。
初代ゴジラは別格ですよね。
これは怪獣映画というカテゴリーを越えてSF映画として傑作だと思います。


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