というわけで久々に拝見しました、「ラメのスウちゃん」(「いつも春のよう」収録)
私が読んだあすな作品の中でも特に印象深く記憶している作品。
土方の手配士、源ちゃんはドブスで男から相手にされないホステスのスウちゃんに一目惚れ。同棲を始めるが交通事故で失明してしまう。スウちゃんは自暴自棄になる源ちゃんに献身的に尽くすが源ちゃんは階段から落ちて死んでしまう。
スウちゃんが繰り返し歌う「露営の歌」(♪勝ってくるぞと勇ましく...ってやつ。昔の軍歌です。)が実に効果的だ。あすな作品には歌をモチーフにしたり演出として使った作品も多いが、この作品にはポップスでも演歌でもいけない。景気がいい歌詞にどこかもの哀しいメロディーのこの歌じゃなけりゃいけない。暫らくのあいだこの歌が頭から離れそうに無い。
たった24ページの漫画だけれど、ブスとブ男の恋物語なんて誰も読みたくないかもしれない。スウちゃんのたった一度の恋として過去形で語られる物語は、かなり自虐的である。
かわいがってくれた男は父親だけ。愛する源ちゃんは小便まみれで死んでゆくというかっこ悪さ。
自虐的であるがゆえに小さな飲み屋を切り盛りするその後のスウちゃんの後姿はたまらなくいとおしい。スウちゃんはブスだけどとても”可愛い女”なのだ。
で、これって1975年の作品、って事は「青い空...」より前の作品だったんですね。イメージ的には「哀しい人々」が後かと思っていたが、この頃ってあすなひろしが一番ノッてた時期なのだなぁ。
それから30年。スウちゃんは60か70になってる勘定だ。
もし作者が存命なら今のスウちゃんの話を描いて欲しかったけど、かなわぬ願いになってしまった。