ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
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05年  12月 某日

■  苦難は続く
「はやぶさ」が正念場を迎えている。
サンプル採集に成功してワーッと盛り上がったのも束の間、帰還出来るか否かの瀬戸際を迎えてしまった。
前回、トラブルそのものは致命的ではないと書いたけれど、その後状況が変わって、場合によっては致命的なことになる可能性が出てきた。

JAXA プレスリリース
松浦晋也のL/D 11月29日の記者会見の様子

そして最新の情報
YMコラム(的川泰宣教授のコラム)

って、ほとんど新しい情報が入ってないんだ。
うう、電源も落ちてますか。状況を把握するのに月曜まで掛かるんですね。あと一週間の時間との勝負って状況になってしまったのにデータが降りてこないんじゃ手の打ちようがないんだろうなぁ。


状況を整理する。

■ 今月中旬までに出発しないと地球へ帰還できないが、サンプルを安全に投下するには上旬でなければならない。
■ 3つあるリアクションホイール(ジャイロ効果で姿勢を保つ装置)のうち、2つが壊れてしまった。
■ その代替処置としてスラスター(姿勢制御用化学燃料エンジン)で姿勢を制御していた。
■ 2系統あるスラスターの主系統で燃料漏れが発生。(バルブが閉じないで噴射しっぱなしになる?)
■ 予備に切り替えるも、出力が低下して姿勢を制御できない。(配管内の凍結かバルブの詰り?)

もう一つ、「はやぶさ」の構造的前提として

■ メインエンジンと高利得アンテナの方向が(主に経済的理由から(T_T) )固定である。

つまり姿勢の制御が出来ないとエンジンを吹かしても進む方向が定まらないし、詳細なデーター通信も出来ない。運行は可能でもトラブルの原因を突きとめるには詳細なデータが必要だし、闇雲にメインエンジンを噴射すれば帰還不能な軌道に入ってしまうのは自明の理。

経済的理由で思い出したのだけれど、今回故障したのはアメリカ製リアクションホイール。国産の半分の値段で(多分)国産品より高性能だったのだと思う。コストパフォーマンスを考えれば当然の選択と言える。ただしブラックボックス。なにか問題が起こったとき構造が解らないっていうのは本当に困るのだよね。対処できない。これはウチのような末端の機械屋でも大手メーカーが中身を公開してくれない時は本当にイライラするので切実に分かる。
だから宇宙開発や自衛隊関係者が予算を無視して国産にこだわるのも理解できるけど、結局はメーカーや製造国との力関係なんだよね。アメリカは日本製のブラックボックスでも政府の圧力で強引に開けたりしてるし。

閑話休題。さらに運用上の問題として

■ 夜間は NASA にお願いして地上アンテナを借りるしかない。

NASA のアンテナだって土星のカッシーニやら火星のローバーやら、いろんなミッションで忙しい。その合間を縫って急遽使わせて、とお願いしてもあちらさんの都合だってあるわけで...。

っと、こんな中で問題を解決して12月上旬に地球に向けて発進しなければならない。
もし、タイミングを逃すと、次のチャンスは4年後になるそうである。うーーーん。
4年間、地球とはやぶさが最短距離になるのを、今の軌道でじっと待ってるって事?。
もし一週間以内に問題が改善されない場合、難しい選択を迫られることになりそうだ。

失敗に終わった火星探査機「のぞみ」が頭をよぎる。
これもスラスターの故障で予定軌道に乗れなかった。奇しくも4年後のチャンスを待っている間に太陽の巨大フレアの影響で電源回路が故障して、最終的に火星の周回軌道には到達できなかった。

良い方に考えれば今回は「のぞみ」の苦い経験を生かしてなんとか「生還」させて欲しいと願うばかりである。

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