ゴジラの味噌汁

かげろう(!日記)
'!' は論理演算子 Not です。
「日記にあらず」と読んでください。

Category: 科学・技術

08年  01月 某日

■  おおとり計画
一昨年盛り上がった小惑星探査機「はやぶさ」であるが、現在はジャイロもイオンエンジンも停止して帰還軌道を慣性航行中である。
次の軌道修正のとき、辛うじて残った一つのジャイロと一つのエンジンが再起動するという保障は無い。(信じてはいるけどね。)

とはいえ、これだけの成果を上げたミッションである。次に期待しない方がおかしい。
プロジェクトのメンバーは、当面、同型の「はやぶさ2」(「おおとり」と命名して欲しい。いや、私は勝手にそう呼ぶ。ちなみに「隼号」と「鳳号」は東宝映画「妖星ゴラス」に登場するロケットの名である。)を作って「イトカワ」とは組成の違う(C型)小惑星を探査し、いずれもっと大型の探査機を作り、火星外軌道の小惑星にも挑戦したいそうだ。

もう、私などこれを聞いただけでわくわくしてしまうのだが・・・どうも予算が付かないらしい。
「文科省のうすら役人ども、何をしてるんだ!」と、文句の一つも言いたくなるけど、ごまめの歯軋り。

でもって、今回、松浦ブログの「はやぶさ2」を応援しようキャンペーンに乗ってみた。
文部科学省の「宇宙開発に関する長期的な計画」に対するパブリックコメント募集ってやつに応募してみたのだった。

「直訴は死罪だべ」
「で、でもこうするしか村のみんなが助かる方法はねえんだ。」

あっ、いや、身元を明らかにして投函するんだから目安箱に近いか。

松浦ブログでは事有るごとにこんな呼びかけをしているのだが、どうも「めんどくさい」が先に立って行動するのは初めて。

という訳で「文科省・参事官サマ」に送ったメールの内容はこちら

大上段に構えすぎて隙だらけの文章だよなぁ。しかも受け売りばかり。国語のテストなら赤点喰らう。
作文は苦手だし、ましてやお役所風の文章なんて書いたことが無いから無茶苦茶ですな。
価値の低い一票だけど、何もしないよりはましだろう、って事で。
(賛同の諸氏はこれをコピペして送って頂いてもOKですよ。もちろんヤバイところはカットして、名前や住所はきっちり記入して。ただし締め切りは1月31日。時間がない)

この手の意見募集なんて役人の(意見を聞きましたよ、っていう)アリバイ作り以上のものでは無いのだろうけど、前回の応募が1億2千万分の 31人って...それじゃあ聞く方も真面目に意見を吸い上げようなんて思わないわなぁ。数人のパンピー(死語)の意見で何百億の予算が動いたら、それはそれで不健全だ。

せめて数千人規模の意見が集まれば良いのだろうけど、告知のしかたがあまりに地味っていうか一般に分りにくい。
自己保身のために存在をアピールするだけのくだらないテレビCMを打ってる天下り機関(なんとか機構とか、かんとか協会とか、なんちゃら行政法人とか)に回す予算を広報に使えよ、って思うぞ。

06年  08月 某日

■  惑星の定義
一応今回の件は書いておかなくてはならないだろう。

IAU(国際天文連合)総会が紛糾。
当初「惑星とは何ぞや」を定義する小委員会が出した惑星の数を9から12に増やすとする意外な結論に、異論が噴出して最終的には逆に8に減ることになった。

今回のすったもんだは元々10年以上前から「冥王星を惑星と呼ぶのは如何なものか」という声が上がり始めたことから始まっている。
遡れば冥王星を惑星と認証したIAU総会でもかなり異論が有ったとか。

その後観測技術が進んで海王星より外側に多数の天体が発見された。かつては「彗星の巣」などと呼ばれた外辺地帯(現在はエッジワース・カイパーベルトと言われている)に新天体が次々と発見され、冥王星はこちらに属する天体に分類した方がいいんじゃないの?ってことだ。(大きさの問題だけじゃなくて軌道や組成の問題も含めて。)だんだん太陽系の辺境のことが分ってきたら今迄の常識では通用しなくなったと言えるかもしれない。

そして混乱のきっかけになったのが冥王星より大きな天体の発見。
まだ正式な名称が決まっていないが、先の小委員会の決定で新惑星になると報道された「2003 UB313」という天体。
発見者は「ゼナ」と呼んでいるのでいずれ承認されると思うけど、冥王星が惑星ならそれより大きなこの天体は当然第10惑星であると主張していた。正論だわな。
でもそれは違うぞってのが惑星研究者の趨勢になっていた。
だから今まで曖昧だった惑星の定義から冥王星を外そうという動きが今回の動議の発端だったわけだ。

ところが小委員会の結論は蓋を開けてみると冥王星を外さないばかりか、冥王星に惑星の地位を与えるために衛星のカロンや小惑星とされていたセレスまで惑星と認める内容だった。(しかも、これ意外と解りやすい。重力均衡で球状になれる大きさなら何でも「惑星」なのだから。ただし今後惑星の数が増え続ける可能性もある。それはそれで良いとも思うけど。このニュースを初めて目にしたときは「ホンマかいな?」という思いと同時に「上手いこと逃げたなぁ」ってのが正直な所。)
心情的に冥王星を惑星として残したい人々も多い。私だって「ヤマト」や「無の障壁」(光瀬龍の短編)で親しんだ冥王星が急に惑星ではなくて「単なるカイパーベルト天体の一つ」になるのは寂しい。しかしアメリカではアメリカ人が発見した唯一の惑星って事でそれ以上の思い入れがあるらしい。しかもゼナを発見したのもUCLAのグループである。
報道では触れていないが裏で相当な政治力が働いたと考えたのは私だけではないだろう。冥王星を惑星から外そうとしていた人々からはゴリ押しにしか見えなかったはずだ。現状では冥王星を惑星と言い張るのはちょっと無理が来ている。

何にせよ今迄の経緯を知らない一般の人には惑星の数がいきなり増えたり、また数日で逆に減ったりは唐突な話だったに違いない。ただ、今回の騒ぎは単に分類上の問題だから太陽系に於ける冥王星の重要性が下がるわけじゃないのだ。NASAが今年の1月に冥王星探査機「New Horizons」を打ち上げたように、益々重要な研究対象になるだろう。

結果は順当なものだが、他に良かった事と困ったことを。
良かったのは「ワケワカラン」とは言いつつ一般の注目を集めたこと。NHKは7時のニュースで会場の前から生中継までやってた。やり過ぎとも思うけど一分野の学会がこれほど注目されたことはない。これで少しでも星に興味を持つ子供が増えれば。

困ったのは用語がいろいろ変更されそうなこと。
上の「エッジワース・カイパーベルト天体」なんて舌を噛みそうな名前、やっと覚えたと思ったら「トランス・ネプチュニアン天体(海王星外天体?)」になるとか、「小惑星」って言葉が無くなって彗星や上記天体もひっくるめて「Small Solar System Bodies」(太陽系小天体?それとも単に小天体が言いやすいか??今風に略したらSSSB??? これじゃ何だかワカラン)とか、冥王星サイズの星はドワーフ・プラネット(dwarf star → 矮星 に習って 矮惑星って訳すと小惑星よりもっと小さい印象を受けるよなぁ。小人惑星は差別用語か?)とするとか。とかとか。まだ日本語訳も定まって無いそうな。

子供たちはともかく脳味噌が化石状態のオッサンには覚えきれないよぅ〜。

06年  08月 某日

■  「時間よ止まれ」について考える
えーっと、少し時間がずれて唐突たけどSYUさんのエッセイ「タイムトンネルにお願い」を読んで改めてつらつら考えたこと。
ちなみに「時間よ止まれ」とは矢沢永吉のヒット曲であると同時にNHKのテレビドラマ「不思議な少年」で主人公サブタンの決め台詞でもある。
ちなみに、ちなみに、私はこのドラマは見ていなかったか、見ていても全く記憶にない。手塚治虫の漫画で知るのみである。

SFテレビドラマ「タイムトンネル」には時間が止まった世界というのが何度か登場する。

静止した時間の狭間で主人公が葛藤する、もしくは戦いを繰り広げる。
これは魅力的なシチュエイションで「タイムトンネル」以前も以後もSFには度々登場する。比較的新しいところでは神林長平の「猶予の月」とか。そしてそれはお約束の事柄で「時間が止まったら光も進まないのだから何も見えないはずじゃないか!」なんて突っ込みは全く野暮なことだ。
私だってそんな事は許容するくらいの度量は有る。
ただ、それとは別に「本当に時間が止まった世界はどんなものなのか?」
少しだけ理屈っぽく思いを廻らせてみた。

時間が止まったら光も進まない。これは子供でも思い付くことだ。でも少しだけ(ほんの少しだけ)増えた今の知識で光も止まるってどういう事なんだろうと考える。

「時間が止まった瞬間」というのは、ある(限りなく短い)一瞬を切り出すことに相当する。時間の流れも全体としては大きな流れを持っているが、ミクロな単位で見れば実は一様ではなくて(空間が一様でないように)流れたり淀んだりしているものらしい。そして更に短い瞬間を切り出したとき世界がどう見えるかということである。

不確定性原理によれば素粒子の位置は観測時間が短くなるほど確定できなくなる。つまり完全に指定された瞬間に一つの素粒子が何処に存在するかは全く不確定という事になる。逆に言えばある一瞬に素粒子は物理的に存在しうる(可能性のある)全ての空間の何処にでも同時に存在することにもなる。
物質が素粒子で構成されているなら、これでは物質は物質としての形を成さないことになる。もし静止した時間の中に主人公がいたら光が進まずに何も見えない上に物質がカオス状態になって何にも触れないことになる。手探りで前に進もうとしても霞の中を歩いているように何の手応えもないはずだ。

もう少し考えてみる。素粒子って何か?
現状、私の理解するところによればエネルギーの特殊な状態、私流に言い換えれば「力の結晶」である。(ほんとか?)
そしてエネルギーの本質が波動(つまり波)であるなら波は時間の関数だから時間が止まってしまったある一瞬にはポテンシャルは有ってもエネルギーそのものは存在しないことになる。つまり海の波には時間を掛ければ岩を削ったり波力発電で電気を起こしたりする力があるけれど時間が止まって静止した(海の)波には何の力も無いようなものだ。
これってどういうこと?

エネルギーが無ければ素粒子すら存在しない。エネルギーそのものが無くても結晶化したエネルギーである素粒子は残らないのか。不可能に思える。水の分子が無ければ氷はできない。素粒子が無ければ原子も分子も存在しない。つまり時間が止まった瞬間には物質世界は消滅することになる。
物質世界は時間から切り離したら存在し得ない訳だ。
うーん。ここまで合っているんだろうか。

時間が凍結した世界を見る主人公は無の世界を見ることになる。
もっと踏み込んでみる。
無の世界を見る主人公は何処にいるのか。
時間が止まったタイムトンネルに戻ったダグとトニーはスライドスクリーンを見つめる人間に似ている。
厳密にはスライドスクリーン上の映像は3次元+時間の4次元の世界なのだが(光子は3次元的に存在するし、時間的に走っている)スライド上の人々は2次元で止まっているように見える。そしてそれを見る人間(主人公)は3次元+時間の4次元の世界に生きている。この場合2つ上の次元から見ていることになるのだが。
もし主人公がより高い次元から人間を見られれば、あるいは時間が凍結した世界も見られるかもしれないが、スライドスクリーン上の世界が厳密には2次元の世界ではないように時間が止まった3次元世界も、より高い次元の幻でしかないのかも知れない。

人間は4つの次元しか感知する感覚がない。しかし現在素粒子の性質を説明するには数学的に11の次元が必要になるとか。数学が苦手な私には知る由も無いけれど、そして4以上の次元は人間にはどんな感覚なのか見当も付かないし本当に11次元必要なのかも今後の課題なのだけれども、いずれ解明できる日を願っている。
SFには過去や未来を見る能力を持った宇宙人や生物がよく登場する。人間がそんな能力を持ったら、ってな話も多い。

静止した時間の世界を見るのが不可能であっても、せめて「時間って何?」っていう質問の答えは知りたいと思う。

なお、以上の考察は素人のあさはかな考えなので信用しないように。
チャン、チャン!

06年  03月 某日

■  蘇生
昨年末から通信が途絶えていた小惑星探査機「はやぶさ」との交信が回復したもよう。まずはめでたい。

だけど今の通信レートが32bps ってのがなんか「瀕死ー」って印象だよ。
これでも1ビットや8ビットよりましだけど、一秒間にたった4バイトのデータしか送れないんだものなぁ。漢字にしたら2文字ぶんですぜ。ネットの回線が遅いなんて文句言ってたらばちがあたるよ。

1月末にはビーコンを受信。意外と早い回復だったようだ。ただし、完全に電源が落ちて、極低温にも曝されたのだろう。ダメージも大きいようだ。

コンピューターがリセットされた訳でタッチダウン前後のデータも消滅したもよう。研究者にはこの辺が一番痛かったかも。
12月の時点で姿勢制御ロケットの燃料(ヒドラジン)が機体内に漏れていたのだが、その後、酸化剤(四酸化窒素)も漏出したらしい。これ、混ざっただけで発火するっていう性質があって、エンジンの構造を単純に出来るからスラスターに使われてるんだけど、よく機体内で発火しなかったものだ。不幸中の幸いっていうか、奇跡に近いんじゃないの?

バッテリーは内部のショートで使用不能。スラスターも燃料が無くて使えない。
電力は太陽電池で賄えるそうだが、姿勢制御も兼ねることになったイオンエンジンを再始動できるかが問題。
これから時間を掛けて内部温度を上げ、ゆっくりと機体内部に残ったガスを追い出してからエンジンのテスト。ハードルは高い。帰還できれば本当の奇跡だ。
でも、その奇跡を祈っちゃうぞ。

JAXAプレスリリース

記者会見の質疑応答(松浦晋也のL/D)

それにしても技術的な説明を読んでると「すげーなぁ」って思う。
残っているイオンエンジンの中和剤は僅か42〜44kg。これで上手くいけばだけど3億kmの距離を戻ってくるんだから(いや、地球をかすめて行くだけだけど)、すごい燃費だよなぁ。
もっとも中和剤のキセノンガスは42kgで700万円ほどするそうだが。

05年  12月 某日

■  科学技術部記者のなれの果て
えーっと、ココの所ずっと暇があると「はやぶさ」関係をヲチしてるわけだけど、今回はちょっと別の角度からの話。

日経の清水正巳という編集委員のコラム。
研究の失敗に寛容な風土はできるか

掲載直後から2ちゃんねるの関連板あたりで批判が相次いで、遂に今この問題ではネット上で一番影響力のある松浦氏も噛み付いた

件のコラムに関しては何の勉強もせずに思い込みだけで書いた記事で、読んだ直後は本当に頭に来たが、もう納まった。私の言いたいことは多くの方がいろんな処で突っ込んでいるから。 あ、これだけは書いておこう。

外国のES細胞捏造なんかと同列に語るな!

これが日経の編集委員で「日経サイエンス」の元編集長ってんだから情けないやら悔しいやら。


随分と昔、これと同じ思いをしたことがある。
発行部数、日本一の某大新聞の署名入り記事で「日本は基礎研究より応用研究に力を入れるべきだ」という論旨の記事を読んだとき。
それまで「日本は研究の成果の美味しい所だけを持って行ってしまう」と海外から批判され、外国が研究の成果を渡してくれなくなってギブアンドテイクじゃなきゃだめだと、やっと基礎研究の重要性が一般にも認知され始めた頃だ。にもかかわらずこの某大新聞は貴重な紙面を割いて「基礎研究はいらない」と言い張る記事を掲載したことに暗澹たる気持ちにさせられた。
小さなコラムとはいえ全国の人が読む新聞だから影響力は否定できない。なるほど、と納得する人も少なくはないだろう。
対して反論する場所はどこにもない。せいぜいが頑張って投書する位だが、それで記事が取り消されることはない。

ところが今回の件に関しては松浦氏も書いておられるように

> ネット時代を迎えて、「事物を伝える」ことはメディアの特権ではなくなった。逆にメディア側が「広く伝えている」が故にウォッチングの対象となり、時には批判されるようになった。

という事だろう。
民主主義が(うまく機能すれば)政治家や役人が「お上」から「市民の下僕」になる様に、ネットによって情報も民主化されつつあり、メディアの人間も特権階級ではいられなくなっているってことにこの清水某は思い至らないから安易な思い込みを書いたわけだ。
ブログは簡単に炎上するが新聞社のサイトは耐火構造になってるから(^^)燃え落ちることはないだろう。
しかし、このコラムもいつかは削除される日が来るが、ネット上で大量に書かれた批判記事の幾つかは残り続けるだろう。今現在でも「清水正巳」と検索すれば本人の記事より松浦氏の記事が先に表示される。
ネットを見る人は、まず批判記事を目にしてから清水某の記事を読むわけだ。

蛇足だけれど、民主主義ってのはすごく危ういバランスの上に成り立ってる。
「十二人の怒れる男」のラストシーン。陪審で少年の冤罪を晴らしたヘンリー・フォンダか誇らしげに言う。「だから民主主義は素晴らしいんだ。」
でもね、もしその場にあんたが居なかったら民主主義で少年は死刑になってたんだよ。

陪審員の中にいつもヘンリー・フォンダがいるとは限らない。
ネットだって誘導を間違うととんでもない事になる。


ってことで、ウチも松浦ブログにトラックバック。え?縁起モノですから。

05年  12月 某日

■  危篤
今日のテレビは一日中「耐震強度偽装事件」の証人喚問。
姉歯某。自己保身のためのファウルは誰でも大なり小なり犯す可能性はあるし、下請けの悲哀が解らないではないが、自分と家族の生活を守るために何百、何千の人の命を危険にさらしたことの言い訳にはならない。
それより何じゃい、あの議員の質問は。お前の意見なんか聞いてない。選挙演説じゃないんだからさっさと質問しろよ。

そんな中、昨日から待っていた「はやぶさ」関連の記者会見。勿論テレビ中継があるわけじゃ無いから「松浦晋也のL/D」だけが頼り。朝から何度もチェック。
上の記事が出る前に速報。うわぁ、だめか...

幾つかの新聞社のサイトを見る限り帰還予定が2010年に延期と云った見出しだけれど、記者会見の様子を見ると現状は、医者も手を出せない意識不明の危篤状態という感が強い。

電源が落ちてビーコンすら受信できない。地上からのコマンドも受け付けないほど姿勢を乱して回転している。
今出来るのは回転モーメントが減衰して姿勢が安定するのをじっと待つだけ。その時太陽電池パネルが反対を向いていたら...電力が回復しないで...って読めるわけだけど、確率の問題ってそういう事ですか?

>70%で通信復旧できる可能性があるなら、運用を続けようということだ。(川口PM)

確かに復旧の可能性が3分の2なら悪くはない。でもその先に待ってるのはもっときわどい運用。
スラスターが復旧しなければイオンエンジンの中和剤として積んでるキセノン噴射で姿勢を制御して帰還軌道に乗せるって超裏技。これ、車で言えばハンドルが壊れたからアクセルとブレーキでスピンターンを繰り返しながら目的地に向かうようなものだ。
つまり
>現状はくしゃみひとつで危篤に陥る状態である。帰還は、重病人にポストまで歩いて貰ってはがきを出そうとしているようなものだ。(同)

可能性がある限り諦めない。この姿勢には頭が下がる。
でも運用チームの皆様、この一ヶ月へとへとだと思います。今はゆっくり休んで鋭気を養って頂きたい。
そして必ず地球圏への帰還を果たして欲しい。気長に待つとしよう。


さて、気を取り直して与太話。
この数回の記者会見の中で度々登場する「みそすり運動」って言葉。
コマの回転が落ちてきたとき大きく首を振るような動作のことなんだけど、いやー、久々に聞きました。いや目にしました。今でも使ってるんだなぁ。
初めて聞いたのは子供のころ。多分地軸が長い時間で移動するのを説明する教育番組か何か。その頃、すでに「随分古い言葉だなー」って思った。我々の世代ならやったことは無くても辛うじて「味噌を擂る」の意味を理解できるけど(それにしても「胡麻を擂る」方がまだ身近だったな。「日本一のごますり男」とか)、今の子供には何の事やら理解できないでしょ。
よほど酔狂じゃなければ自家製の味噌なんて作らないし、すり鉢だって滅多に無いよ。

こういう意味不明の言葉は解りやすい言葉に置き換えるのが良いのか、昔の生活を伝えるために残すのが良いのか?
でもロートルには「コーニング」よりは解りやすいんだけどね。

05年  12月 某日

■  苦難は続く
「はやぶさ」が正念場を迎えている。
サンプル採集に成功してワーッと盛り上がったのも束の間、帰還出来るか否かの瀬戸際を迎えてしまった。
前回、トラブルそのものは致命的ではないと書いたけれど、その後状況が変わって、場合によっては致命的なことになる可能性が出てきた。

JAXA プレスリリース
松浦晋也のL/D 11月29日の記者会見の様子

そして最新の情報
YMコラム(的川泰宣教授のコラム)

って、ほとんど新しい情報が入ってないんだ。
うう、電源も落ちてますか。状況を把握するのに月曜まで掛かるんですね。あと一週間の時間との勝負って状況になってしまったのにデータが降りてこないんじゃ手の打ちようがないんだろうなぁ。


状況を整理する。

■ 今月中旬までに出発しないと地球へ帰還できないが、サンプルを安全に投下するには上旬でなければならない。
■ 3つあるリアクションホイール(ジャイロ効果で姿勢を保つ装置)のうち、2つが壊れてしまった。
■ その代替処置としてスラスター(姿勢制御用化学燃料エンジン)で姿勢を制御していた。
■ 2系統あるスラスターの主系統で燃料漏れが発生。(バルブが閉じないで噴射しっぱなしになる?)
■ 予備に切り替えるも、出力が低下して姿勢を制御できない。(配管内の凍結かバルブの詰り?)

もう一つ、「はやぶさ」の構造的前提として

■ メインエンジンと高利得アンテナの方向が(主に経済的理由から(T_T) )固定である。

つまり姿勢の制御が出来ないとエンジンを吹かしても進む方向が定まらないし、詳細なデーター通信も出来ない。運行は可能でもトラブルの原因を突きとめるには詳細なデータが必要だし、闇雲にメインエンジンを噴射すれば帰還不能な軌道に入ってしまうのは自明の理。

経済的理由で思い出したのだけれど、今回故障したのはアメリカ製リアクションホイール。国産の半分の値段で(多分)国産品より高性能だったのだと思う。コストパフォーマンスを考えれば当然の選択と言える。ただしブラックボックス。なにか問題が起こったとき構造が解らないっていうのは本当に困るのだよね。対処できない。これはウチのような末端の機械屋でも大手メーカーが中身を公開してくれない時は本当にイライラするので切実に分かる。
だから宇宙開発や自衛隊関係者が予算を無視して国産にこだわるのも理解できるけど、結局はメーカーや製造国との力関係なんだよね。アメリカは日本製のブラックボックスでも政府の圧力で強引に開けたりしてるし。

閑話休題。さらに運用上の問題として

■ 夜間は NASA にお願いして地上アンテナを借りるしかない。

NASA のアンテナだって土星のカッシーニやら火星のローバーやら、いろんなミッションで忙しい。その合間を縫って急遽使わせて、とお願いしてもあちらさんの都合だってあるわけで...。

っと、こんな中で問題を解決して12月上旬に地球に向けて発進しなければならない。
もし、タイミングを逃すと、次のチャンスは4年後になるそうである。うーーーん。
4年間、地球とはやぶさが最短距離になるのを、今の軌道でじっと待ってるって事?。
もし一週間以内に問題が改善されない場合、難しい選択を迫られることになりそうだ。

失敗に終わった火星探査機「のぞみ」が頭をよぎる。
これもスラスターの故障で予定軌道に乗れなかった。奇しくも4年後のチャンスを待っている間に太陽の巨大フレアの影響で電源回路が故障して、最終的に火星の周回軌道には到達できなかった。

良い方に考えれば今回は「のぞみ」の苦い経験を生かしてなんとか「生還」させて欲しいと願うばかりである。

05年  11月 某日

■  行け、行け、川口探検隊!
しまった、寝過ごした。

慌ててライブを見るとちょうど上昇に転じたところ。
予定より少しだけ遅れたみたいだ。

「何らかの理由により、はやぶさは上昇に転じました。」
なんて書いてあるから少し不安になる。いや、通信が途絶えてるから、地上からは「はやぶさ」が発するビーコンのドップラー偏移で降下してるか上昇してるかだけしか分からないだけなのだけれど。

暫くは待つしかない。地上アンテナもちょうどアメリカから臼田に切り替わり。前回はこのタイミングでトラブルが発生したのだが、今回は大丈夫そう。
相模原の管制室のライブ映像を眺める。8時過ぎから人が増えてきた感じ。でも表情は笑っているように見える。どうやら順調のようだ。

何度も松浦ブログを確認。
「午前8時45分
 採取用の弾丸発射を確認。その後も順調。」
だそうである。

やったね!!

これを書いている午前10時半現在、「はやぶさ」は無事。そしてサンプラーホーンが何かに触れた、以上のことは判らないとしている。JAXA はあくまで慎重だけど、成功は間違いないだろう。
ハイゲインアンテナからのデータのダウンロードも始まったようだ。

ところで、タイトルの「川口探検隊」
プロジェクトマネージャーのお名前です。カメラが先に行って待ってたりしない、これは本当の宇宙探検なのだな。



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と、安心しきって仕事に出かけて帰ってきたらちょっとヤバイことになってるみたいだ。
姿勢制御用エンジンに燃料漏れ?
うわぁ、もったいない、もったいない。トラブルそのものは致命的なものではないのだけれど、また燃料を無駄遣いしちゃった。
帰還時の姿勢制御は大丈夫なんだろうか。

05年  11月 某日

■  着陸していた!!
またまた「はやぶさ」
スマソ、個人的には今年最大のイベントだから。

という訳でその後の状況がJAXAからリリースされた。
「はやぶさ」の第1回着陸飛行の結果と今後の計画について

着陸していないと予想されていたのが、実は着陸していた事は、またまた松浦氏のブログ(なにしろ本家のJAXAより情報が早くて詳しい)で知って驚いたのだが、詳細な発表を読むとかなりきわどい状況だったことが解る。

■ 「はやぶさ」は自律降下中に障害物を検知した。

これは結果的に誤動作という事なのだけれど、上記発表では「何らかの反射光を検出したため」と書かれているだけで原因が特定されていない。
もし、ターゲットマーカーが着地した時に巻き上げた砂や砂利に反応したのなら次のときも起こりうるし、地形に由来するものなら運を天に任せるしかない。
いずれにしてもセンサーの判断基準を見直す必要がある。

■ 障害物があると判断したのに緊急離脱できなかった。

今回は判断そのものが間違っていたから無事だったけれど、本当に岩などの障害物が有ったら致命的なことになりかねない。

■ 着地後、2回バウンドしている。

バウンドは予想外だったらしい。 → 「はやぶさリンク」:はやぶさ23日夜時点の現状、ミネルヴァについて
本来、着地した瞬間に弾丸を発射して舞い上がったサンプルを収集するわけだが、機体がバウンドして逃げてしまったら上手く集められるのだろうか。少々不安が残る。

■ その後、完全に着地したにも係わらず、プログラム的には既に離脱状態の制御に移っていたので離陸のための噴射をしなかった。

一つずつの判断を見れば適切なプログラムだけれど全体としては限りなくバグに近い。まあ、これに関しては新しいプログラムを送れば済むことだろうが。


でもって、ネットを見ると「着陸してて良かった」という反応が多いようだけど、
これ、「着陸」って言えるだろうか。
どちらかと言えば「不時着」だよなあ。いや、責めてるんじゃない、心配してるんだ。
もし地上からの緊急離陸命令を受け付けなかったらと思うと冷や汗ものである。
2回目の着陸も無理をしないで安全第一で。これだけデータが取れればミッションが失敗なんていう人はいないと思うぞ。
30分っていうオマケの長期滞在中に(予定では地上にいるのは1秒ほどだった)姿勢制御で元々余裕のない燃料を減らしてるし、技術試験が目的なら何としても帰って来て欲しい。

小惑星に接地した後離陸した世界初の探査機になった訳なのだが「嬉しさも中ぐらいなり」ってのが本音かな。


もう一つ、5thstarさんで紹介されている関連ネタで「はやぶさ」が緊急離脱した理由が分かった。
上記JAXAのサイトの「イトカワ」地表に投影された「はやぶさ」の影とターゲットマーカーが光っている写真(図3a)を見た上でご覧あれ。

小さい写真ではよく分からなかったけど、大きい写真を見て大笑い。
わはは、これじゃ離脱しないわけにいかない。
アメリカ人もやるな。

更についでと言っては何だけど、ペーパークラフト・サイトの端くれとしてはこれも紹介しておこう。
はやぶさペーパークラフト

05年  11月 某日

■  はやぶさ
今日は「はやぶさ」の着陸。
起きなけりゃ、起きなけりゃ...

朝の5時、ボーっとした頭でHayabusa Liveを開く。
おお! 「Go」が出てる。

だけど更新は10分に一度ほど。もどかしい。
しかも「午前5時40分現在、高度は約90メートルです。」のアナウンスの後は更新が止まってしまった。
なんだよぅ、ここからが肝心なところじゃんか。

最初のリハーサル降下の時も順調に降下中のアナウンスがパッタリ止まって1時間以上経ってから急に「本日のリハーサルは中止になりました」という簡単なメッセージで御仕舞いだった。
オペレーションが忙しくなると人手も予算も足りないから、広報にまで手が回らなくなるのは充分理解しているつもりだけど、一国民としては「何がなんだか訳わからん」状態にされるのは辛い。
都合の悪いことが起こると「ちょっと待っとけモード」に切り替えてるとは思いたくはないけど、勘ぐりたくもなる。

こうなると松浦ブログだけが頼り。
相模原のISASプレスルームから刻々と更新されてる。
ターゲットマーカーを投下。
「はやぶさ」が上昇に転じた。
着地したか否かは不明。

うん、うん。ターゲットマーカー投下後は直接交信が出来なくなるから何も解らないのだね。これも前日の記者会見の模様を詳細にアップされた松浦氏のおかげで手順を知ることが出来た。
でもこれって本来納税者の理解を得るために国がやるべきことじゃないか。
せめて特別なイベントの時くらい現場スタッフの負担にならないように人を派遣するとか。

って、あわわ、トラブルが発生した模様。(07:57 AM)
「はやぶさリンク」:トラブル発生

現在まで上昇は確認されていない。
アンテナの切り替え時間ってのもタイミングが悪い。
よく解らないのは現在もビーコンを受信しているのか、いないのか。
もしビーコンが途絶えたとなると最悪だけど...(08:35 AM)

おお、ビーコンは受信できてるのね。よかった、よかった。
そして地表に居る可能性も消えたようだから、なんとか修復してほしい。
ガンバレ! (09:45 AM)

とりあえずだけど、通信も回復したらしい。
着地に成功していたのか気になるところだけど判るのは明日になっちゃうのかな。それより無事が何より。

今日は日曜だというのにこれから仕事である。

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